「a」と「the」の最も基本的な違いは「共通認識の有無」です。
しかし、「a」と「the」を本当に理解するには「共通認識の有無」だけでは不十分です。
この記事では、「a」と「the」の違いや使い方を全て、徹底的に解説します!
「a」と「the」の最も基本的な違い
まずは「a」と「the」の最も基本的な違い、「共通認識の有無」について説明します。
「a」の基本の意味は、「たくさんの中で何でもいいから一つ」です。
一方で、「the」の基本の意味は「あの〇〇、と言って伝わるもの」です。
例えば、本を借りる際に、どの本かは指定せずに「本を一冊貸して」とお願いする際には「a」を使います。
これは、たくさんある本の中で何でもいいから一つ貸してと言っているので、「a」が適しています。
一方で、前もって特定の本についての話をしていたとして、「あの本貸して」と、その特定の本を暗示して言う場合は「the」を使います。
これは、「あの本」というだけで、どの本のことかがわかる「共通認識」が話者同士の間で既にあるからです。
つまり、「a」は「共通認識のないもの」に対して使用され、「the」は「共通認識のあるもの」に使用されます。
これが最も基本的な「a」と「the」の違いであり、それぞれの軸になります。
ただ、この理解だけでは「a」と「the」を使いこなすことはできません。
もっとより深く「a」と「the」を知り、使いこなす為に、それぞれの特徴を見ていきましょう。
「a」の特徴
「a」には下記のような特徴があります。
- たくさんある中の一つ
- 数えられるもので単数
- 初登場のもの・未知のもの
「たくさんある中の一つ」というのは先ほど説明した通りなので割愛します。
数えられるもので単数
「a」は数えられるもので単数のものにしか使用できません。
数えられるものとは「りんご」や「本」などです。
逆に「水」や「空気」などは数えられないものなので「a」は使えません。
初登場のもの・未知のもの
「a」は話の中で初めて出てくるものや、未知のものに使用されます。
例文:
I saw a cat.
猫を見たよ
この場合、「a cat」と言っているので、話の中で初めて登場する猫を指しています。
この時点では、聞き手はその猫がどの猫なのかは知らない状態で、「一匹の猫」という情報だけが伝わっています。
これが「a」の特徴です。
次に「the」の特徴を説明していきます。
「the」の特徴
「the」には下記のような特徴があります。
- 共通認識があるもの
- 数えられるもの・数えられないもの両方
- 自然や世界に関する唯一のもの
- 自分にとってのいつもの場所やもの
- 象徴的なもの
- 最上級のもの
- 特定のグループや種類
- 日にちや時代
- 固有名詞
- 例外・楽器の演奏
「共通認識があるもの」というのは先ほど説明した通りなので割愛します。
数えられるもの・数えられないもの両方
「the」は、数えられるものと数えられないもの、どちらにも使えます。
例えば、「the dog」と言えば「ある1匹の犬」ですが、「the dogs」と言えば「ある複数の犬」になります。
例文:
The dog is barking.
その犬が吠えています
次に数えられないものの例です。
「水」「空気」「砂糖」など、具体的に「1つ、2つ」と数えるのが難しいものにも「the」は使えます。
例文:
The water is cold.
その水は冷たい
ここでは、全ての水が冷たいと言っている訳ではなく、ある特定の水が冷たいと言っています。
「the」は数えられるかどうかに関係なく使えると覚えておきましょう。
自然や世界に関する唯一のもの
「the」は自然や世界に関する唯一のものにも使われます。
その理由としては、人々の間で既に共通認識ができているからです。
例えば、「太陽」です。
「太陽」と聞いて、イメージするものは基本的にはみんな同じものだと思います。
なぜなら一つしかないからです。
このように、みんなが知っていて、かつ一つしかない自然・世界に関するものには「the」が使用されます。
「太陽」の他にも自然や世界に関して「the」が使われるものはたくさんあるので、箇条書きで下記に記載します。
地理的特徴
- アマゾン川 : the Amazon River
- ヒマラヤ山脈 : the Himalayas
- 太平洋 : the Pacific Ocean
- サハラ砂漠 : the Sahara Desert
自然現象
- 天気 : the weather
- 風 : the wind
- 雨 : the rain
宇宙や天体
- 太陽 : the sun
- 月 : the moon
- 星々 : the stars
- 宇宙 : the universe
方向や地域
- 北極 : the North Pole
- 赤道 : the equator
- 西洋 : the West
地形や気候
- 海岸 : the coast
- 山々 : the mountains
- 森 : the forest
自分にとってのいつもの場所やもの
次はちょっと特殊です。
「the」の基本的な特徴として「共通認識」と説明しましたが、今回の特徴では「共通認識」に関連した形ではありません。
「the」は、たとえ相手が全く知らない場所や物であったとしても、自分にとって日常的な場所や物であれば使用することができます。
そして、「the」を使った場合は「いつも行きつけの」や「いつも使っている」というニュアンスがつきます。
例えば、スーパーマーケットや病院、図書館、車、腕時計などです。
例文:
I’m going to the supermarket.
スーパーマーケットに行きます。
このように、相手と共通認識をもっていない物にでも「the」を使うことができます
ちなみに、この文章の「the」を 「a」に変えることも可能です。
ただ、ニュアンスが少し変わってしまいます。
I’m going to a supermarket.
スーパーマーケットに行きます。
この場合、「ランダムに一つのスーパーマーケットに行く」というニュアンスが含まれます。
一方で「the」を使った先ほどの例文だと
I’m going to the supermarket.
スーパーマーケットに行きます。
こちらの文章では、「いつも行っているスーパーマーケットに行く」というニュアンスになります。
これは場所や物など様々なものに適用されます。
象徴的なもの
「the」は象徴的なものを指すときにも使います。
たとえば、「the lion」と言うと、ただのライオンではなく「ライオンの中のライオン」、つまり特別で象徴的なライオンを表現することができます。
例文:
The lion is the king of the jungle.
ライオンはジャングルの王です。
この文の「the lion」は、ある特定の一頭のライオンを示しているわけではありません。
ライオンという存在がジャングルの王であることを表しているのです。
実は、日本語でもこの意味合いの「the」を使うことがあります。
例えば、「あの人はザ日本人だね」のような表現です。
「まさに〇〇」と強調する時などに使っていると思います。
このように「the」は、何か象徴するものを表すときにも使います。
最上級のもの
「the」は最上級を表す形容詞や副詞にも使われます。
最上級は、あるカテゴリーの中で一番のものを示すため、自然と唯一性が強調されます。
そのため、話し手と聞き手の間で何を指しているのかが明確になる為「the」が使われます。
例文:
He is the tallest student in the class.
彼はクラスで一番背が高い生徒です。
例文:
She runs the fastest.
彼女が一番速く走る。
特定のグループや種類
「the + 形容詞」とすることで、その形容詞の特徴を持つすべての人やもののグループ全体を表すことができます。
社会的なグループ
- 裕福な人々 : the rich
- 貧しい人々 : the poor
- 高齢者 : the elderly
- 若者 : the young
国や地域の人々
- イギリス人 : the British
- フランス人 : the French
- 日本人 : the Japanese
身体的・精神的状態にある人々
- 盲目の人々 : the blind
- 聴覚障害者 : the deaf
- 障害者 : the disabled
抽象的な概念のグループ
- 善良な人々・善 : the good
- 悪人・悪 : the evil
- 未知のもの・未知の世界 : the unknown
日にちや時代
日にちや時代にも「the」が使用されます。
日にちや時代に「the」を使うのは、その日にちが「唯一無二の特定の日」だからです。
例えば、「the 5th of May」と言うと、「5月5日」という日が「唯一無二の特定の日」として示されます。
これは、今年か来年かを特に決めていなくても、「5月5日」という日にち自体が特定されているからです。
特定の日付や時間帯
- 5月5日 : the 5th of May
- 9月1日の朝 : the morning of September 1st
- イベントの夕方 : the evening of the event
特定の時代や歴史的な期間
- ルネサンス時代 : the Renaissance
- 中世 : the Middle Ages
- 20世紀 : the 20th century
- 1990年代 : the 1990s
祝日や特定の日の時間帯
- アメリカの独立記念日 : the Fourth of July
- 大晦日 : the New Year’s Eve
固有名詞
固有名詞にも「the」が使用されます。
ただ、ものによって「the」を使う場合と使わない場合があります。
正直、固有名詞に使用される「the」は不規則なので、「the」が使用されるものを暗記することをお勧めします。
以下に「the」を使う固有名詞の例を挙げます。
建物や施設
- エッフェル塔 : the Eiffel Tower
- 大英博物館 : the British Museum
- ホワイトハウス : the White House
組織や団体
- 国際連合 : the United Nations
- ニューヨーク・タイムズ : the New York Times
- ロンドン交響楽団 : the London Symphony Orchestra
特定の国名や地域
- アメリカ合衆国 : the United States
- オランダ : the Netherlands
- フィリピン : the Philippines
次に固有名詞に「the」を使わないケースの例を箇条書きでまとめました。
個人名(theがつかない)
- ジョン・スミス : John Smith
- メアリー・ジョンソン : Mary Johnson
ほとんどの都市名(theがつかない)
- 東京 : Tokyo
- ロンドン : London
ほとんどの単一の湖や山(theがつかない)
- ヴィクトリア湖 : Lake Victoria
- 富士山 : Mount Fuji